海外留学体験レポート F−1
イタリア・シチリア・1年
K.K.さん(本人) 事前編 2016年9月掲載

 通っている高校の特徴

私は、私立高校の国際コースに通っています。この国際コースは、高校2年生の夏から1年間の長期留学が義務付けられており、まさに高校で留学するためのコースです。授業の内容も留学に備えたものになっていて、数学を英語で習ったり、日本舞踊や華道、茶道、空手などの日本の伝統的な文化を習ったりします。外国から来た先生に教えてもらうことも多いです。

クラスメートは、付属の中学校からそのまま進学した「中入生」が4人と、都内また埼玉県の中学校から進学してきた「高入生」が10人の合計14人です。人数が少ないので、教室をとても広々と使うことができます。また人数が少ないからこそ、クラスメイトは全員が仲良しです。

国際コースの14人に共通することは、みな、自分の意見をはっきりという人たちということです。また、高校の普通のクラスだと、EXILEやジャニーズ、J−POPなどの音楽を好む人が多いでしょうが、私たちのクラスではそれらは少数派で、わずかにJ−POPのファンが2人いるだけで、12人は海外の音楽しか聴きません。音楽的な趣味では、異端児が集まっていると言えそうです。

 留学を決めた理由

私は、小学校3年生までアメリカに住んでいました。また、家族旅行では北欧や中国に行ったことがあります。中学生の時には武蔵野市の使節団としてロシアに派遣され、とても楽しい毎日を過ごしました。だから、初めてのところに旅するのは大好きです。そして、母も高校時代にアメリカに留学した経験があります。このようなことから、私が高校で留学したいと言いだしても、家族に反対されることはまったくありませんでした。母は自分の経験から、留学についていろいろと役に立つアドバイスをしてくれました。

 留学方法の選択

高校生の留学には、いくつかの方法があります。私の場合は、すべてを自分で決めて費用も全額自己負担の「私費留学」、学校を通して学校が指定する留学先の中から選ぶ「協定校留学」、費用負担なしですが派遣国がどこになるのか分からない「ロータリーでの交換留学」、そして自己負担額がそれほど大きくなく派遣国を選べる「留学団体を通した交換留学」の4つから選ぶことになりました。

私費留学は、留学する国や都市、通う学校、居住形態など細部まで自分で指定できますが、全額自己負担で高額です。細かいことを決め込んでいくために情報収集や交渉などの手間もかかります。

協定校留学は、自分が通っている高校の海外協定校に通うという留学なので、安心感があります。現地校は留学生を受け入れる体制が整っているので、留学生が苦労することが交換留学と比べて少ないと思われます。しかし、同じ高校からの留学生と同じ地域・学校や近い地域・学校に派遣されることがありますし、都市部に派遣されることが多いので地域社会に溶け込むことが比較的難しい、という意見もあります。現地校では留学生用のクラスに入れられることが多いようで、日本語の授業もあるそうです。つまり、留学生としての経験があまりできない可能性がある、ということです。この協定校留学は、海外に協定校を持っていない高校では不可能ですが、私の高校の場合は留学に積極的であるため、世界各国に30校くらいの協定校がありました。

ロータリー財団による留学は、留学費用の全額と、そして現地でのお小遣いまで、一切の費用を財団が負担してくれます。しかし、留学する国・都市・地域は、出発直前までどこなるか分かりません。

留学団体を通した「交換留学」は、ホストファミリーや受け入れ校はボランティアなので、現地滞在費や現地通学費がかからず、比較的少額で留学できます。留学先の国も選ぶことができます。このようなことから、交換留学は人気があります。そのため、派遣生選考試験を受けて、合格しないと留学できません。

派遣生選考試験の内容は、英語や小論文、面接です。私は学校の英語の成績はあまり良くないのですが、TOEICでは900点を超えています。書きは苦手ですが、読んだり聞いたり話したりするのは、小学校3年生までアメリカで生活していたため、まあまあ得意です。留学団体の選考試験の英語は、聞いて話すが主体とのことで、それなら私でも合格できる可能性があると考え、交換留学を目指すことにしました。協定校留学は留学経験のある母に却下され、ロータリーについてはまったく知識がなかったので、交換留学しか選択肢がなかった、ということもあります。

 留学先の選択

私が一番迷ったのは派遣国を選ぶ時です。アメリカやカナダ、オーストラリアなど英語圏はあまり考えませんでした。非英語圏に行って、第二外国語を習得したいと思ったからです。非英語圏でも、英語を使う機会は少なくないだろうから、英語力も伸びるのでは、とも思いました。

そのため、まだ行ったことがないヨーロッパに興味を持ちました。ロシアやイタリア、スイスなどが思い浮かび、イタリアとロシアで迷いました。ロシアは前年の夏に極東のパリと呼ばれるハバロフスクに行っており、ロシア語で自己紹介程度はできるようになっていて、親しみがありました。しかしロシアに派遣された場合、どの地域に派遣されるかわかりません。大好きなハバロフスクならうれしいですが、極寒の地域に派遣されたら、厳しい冬を乗り越えられないと思いました。

イタリアは行ったことがありません。イタリア語もまったく分かりません。友達と行ったCinco De Mayoのラテンフェスでは、私は引っ込み思案になってしまいました。たいていどこにいても、積極的に人に声をかけてうち解けていける私ですが、このラテンフェスでは、「ラテンは苦手だ」と感じてしまい、まったく駄目だったのです。ラテンの国はスペインやポルトガル、ブラジル、イタリアなどたくさんあり、また南米の国々もこれからどんどん発展していくと思います。だからこそ、ラテンの文化にも慣れて、世界中のどのような地域でも臆することのない自分になりたいと考えました。また、ロシア語を学んだ時に苦労した巻き舌とRの発音も上手にできるようになりたいとも思っていました。さらに、イタリアに留学した人の話では、イタリアにはSiestaがあり、昼には学校を終えて昼食を家で食べるそうで、このようなイタリアの生活習慣は自分に合っていると感じました。このようなことから、私はイタリアを第一希望にしました。

 留学団体の説明会

日本にはいくつもの交換留学生派遣団体があります。私は高校入試が終わった2月から、複数の留学団体の説明会に行きました。アメリカにのみ派遣している団体や、英語圏のみに派遣する団体、ホストファミリーが決まらなければ私費留学生になる交換留学の団体など、その内容は様々でしたした。留学団体の説明会は、いろいろなことが分かるので是非とも行くべきです。また、様々な団体の説明会に行くことをお勧めします。

私の母がお世話になった留学団体はEILです。アメリカ以外にもヨーロッパでいくつかの国へ派遣しています。また、ジャムスクールの塾長は、自分の娘が利用したAFSを薦めてくれました。AFSは世界でも有数の規模の留学団体で、世界各国に派遣しており、ボランティア人口の総数は赤十字に次いで世界第2位とのこと。そこで私は、7月の1学期期末試験直前の時期に、AFSとEILの派遣生選考試験を受験することにしました。

 選考試験の内容

まず、EILの選考試験を受験しました。その1週間後、AFSのB日程の選考試験を受けました。AFSの試験は、6月にA日程の選考、7月にB日程の選考があります。AFSを受験する場合は、早くから動いて、このA日程から受験した方が合格しやすいと思います。また、カナダなど派遣国によっては、A日程で募集が終わりになる国もあります。

試験の内容はどちらも、英語の試験(ELTiS)、一般教養(歴史や漢字、WHOやEUなどのアルファベットの略語などの一般常識問題)、そして面接(EILは本人・保護者と面接官の三者面接、AFSは本人と面接官の二者面接)でした。

ELTiSは、数多くの留学団体で採用されている英語の試験で、3つくらいのバリエーションがあるそうです。ラッキーだと、同じバージョンの試験を2回受けることもあります(友人の話では、2015年度のWYFとAFSの1回目が同じであった、とのこと)。まだ新しいテストなので、英検のような過去問題集や傾向対策本などは出版されていません。教材は留学団体の説明会で配布されている薄い冊子だけでしたので、これで勉強しました。

なお、最近は昔よりも、アメリカ側が要求する英語力の水準が高まったそうです。AFSをはじめ多くの留学団体では、アメリカへ派遣する学生の英語力向上に努めているようです。アメリカ派遣で合格した派遣生が、選考試験に合格した後も、より高得点を取ることを求められて、再度ELTiSを受験した、という話も聞きました。

一般教養の試験に向けて、私はあまり勉強しませんでした。どのような問題が出るのか見当もつかなかったからです。しかし、漢字の四字熟語や慣用句などが出ましたので、これらの勉強はしておくべきだったと思います。

「私は性格的に、面接試験では、たいして緊張しないだろう」と思っていたのですが、本番のプレッシャーはとても大きかったです。直前になって、とてつもなく緊張してしまいました。「面接試験では、約10か月の間この生徒が一人で海外で留学生活を乗り越えられるのかを審査する。だから自信をもって、自分の思っていることを話せば大丈夫」と母からアドバイスされていたので、がんばりました。

AFSの選考の3日後、AFSから第一希望のイタリア派遣で合格通知が届きました。その後EILからも、同様の合格通知が届きました。

 留学団体の決定

EILの選考の会場は、高校の教室より少し小さいくらいサイズの会議室で、受験生は10人にも満たない少人数でした。AFSの選考会場は、青山学院大学で、階段状に机の並んだ大きい教室に、受験生は100人以上いました。EILは毎月選考を行っていますが、AFSの選考は年3回のみなので、この点でAFSの方が受験生が多くなりやすいですが、それでもAFSの規模の大きさがよく分かりました。

AFSの選考は、午前中にELTiSと一般教養の試験、昼食休憩の後に面接でした。その面接の前に、GL(元派遣生の大学生たちのボランティアスタッフ)との30分間くらいの交流がありました。AFSは、第二次世界大戦直後の1947年からアメリカで活動を始め、日本でも1954年から活動を始めていて、たくさんの経験を積んだたくさんの帰国生がいて、その人たちがその後もAFSの活動に関わっているとのこと。

GLたちは、以前のAFSの説明会でも自分の留学体験談を話してくれたりしていて、顔を見たことのある人もいましたが、みんなきらきらと輝いていました。彼らを見て、憧れない人はいないと思います。彼らと過ごす時間は、とても新鮮で、気持ちが良かったです。大いにリフレッシュすることができました。GLの一人ひとりとふれあうことができて、「ぜひともAFSに合格したい」という気持ちが一層強くなりました。A日程で受験した友人が、まだ合否が分からない段階で「AFSで留学して、帰国したら2人でAFSのGLをやろう」と言っていたのですが、その理由が分かりました。

このようなことから、私はAFS第63期イタリア派遣生となりました。