NHK・首都圏ネットワーク・特集「変わる教育現場」
2002年12月16日(月)・17日(火)・18日(水)

<第1回・岐路に立つ土曜勉強会>

◇スタジオ映像:アナウンサー

今年4月から学校週5日制がスタートし、中学校の通知表には絶対評価が導入されました。教育を取り巻く環境が大きく様変わりしています。こうした変化がどんな影響をもたらしているのか、「変わる教育現場」と題して、今日から3回のシリーズでお伝えします。

1回目は、休みになった土曜日に、自治体が主催して開かれている勉強会です。学力低下を防ごうと各地で始まった土曜日の勉強会ですが、中には、出席者が大幅に減っているところも出ています。埼玉県深谷市の勉強会では、参加者が4月の半分以下に減ってしまいました。

◇参考映像:“がんばルーム”の様子

埼玉県深谷市が毎週土曜日に開いている勉強会“がんばルーム”。内容は基本的な復習に限られています。講師は“ちいきの先生”と呼ばれる元教師や学生たち。学校のように授業をするわけではありません。最近、参加する子どもたちが減ってきました。

◇参考映像:“がんばルーム”の生徒の談話

「ごろごろしているんだ、家で。だから勉強してこいって、お母さんに言われた」。

◇参考映像:“ちいきの先生”の談話

「スポーツや家族で出かけるなどの理由によるものだが、約60%しか来ていないので残念です」。

◇参考映像:最近の“がんばルーム”出席状況グラフ

小学生は54%が欠席、中学生は84%が欠席です。

◇参考映像:土曜日の過ごし方グラフ

欠席の理由をアンケート調査したところ、土曜日の過ごし方としては、スポーツ・部活、テレビ、友達と遊ぶ、塾・自宅で勉強、家族で外出、の順となりました。

◇参考映像:ある小学6年生の生活ぶり

土曜日はスポーツ少年団でバスケットボールをしています。母親の薦めもあって“がんばルーム”に申し込みました。最初は通っていましたが、試合や練習が重なり、最近はまったく通っていません。本人は「スポーツが好きなのでバスケットボールを優先したい」、母親は「最初は通わないので心配でしたが、最近は平日にきちんと勉強させれば充分と考えるようになった」とのことです。

◇参考映像:ある学習塾の様子

“がんばルーム”を辞めて、土曜日に塾に通う子どもも出てきました。深谷市のある塾は、今年の春、入塾者が少なく危機感を強めていました。しかし最近は市の勉強会に物足りなさを感じて塾に移ってくる子が増えてきています。

◇参考映像:塾の生徒たちの談話

「学校みたいに教えてくれるかと思ったら自習みたいなので行かなくなりました」。
「『がんばルーム』は基礎的で物足りません。塾だとレベルに応じた問題があるので、自分のレベルに合った問題ができます」。

◇参考映像:深谷市教育委員会

土曜勉強会の欠席者が増えたので、市でも勉強会内容を一部見直し始めました。基本中心の自習では物足りないという声を受けて、プリントの問題を増やしたり、応用問題を取り入れたりしています。しかし休みになった土曜日に授業をするわけにはいきません。勉強の内容や指導の仕方には限界があります。

◇参考映像:深谷市教育委員会の課長補佐の談話

「自学自習と言わずどんどん勉強を教えるべきという意見もあったが、完全週5日制になり子どもたちを家庭や地域に返そうというのが主旨なので、学校のように授業を行うのは主旨に反します」。

◇参考映像:“がんばルーム”の様子

学校週5日制による学力の低下を防ごうと始まった深谷市の“がんばルーム”、欠席者の増加に歯止めをかける有効な手だてを見いだせないまま2学期を終えようとしています。

◇スタジオ映像:アナウンサー&取材記者

土曜勉強会の参加率は、小学生が4月の38.8%から11月の17%へ、中学生は4月の34.9%から11月の4.5%へと、急速に減少しています。土曜日の勉強会は一部の子どもたちのものになりつつあります。勉強会をやめてしまった方がいいという意見もありますが、親が土曜日に働いている家庭などからは続けて欲しいという意見もあります。また、学校での勉強の時間が減った分、基礎的な内容でいいから勉強を教えて欲しいという意見も強く残っています。市ではこうした意見が残っている以上、勉強会を続けていこうという考えです。

土曜日の過ごし方がいろいろになっている中で、どう続けていくか、これは難しい問題です。土曜日が休みになって、始めのうちはかなり不安を訴える親や子供が多かったですが、8か月あまりがたって、土曜日をどう過ごすのかということについて、各家庭で話し合いをしたりして、考え方によって違いが出てきているのも確かです。そうした中でこの市の勉強会が本当に必要なのか、続けていくとすれば、どういった子どもを対象に何を教えるのか、ということを原点に帰って考え直す必要があります。